ハサミの使い方による障害

美容師さんのハサミの使い方による障害

今回、手や腕の痛みで来院された20年以上のベテラン美容師さんの症例から、ハサミの使い方が及ぼす影響についてまとめてみました。

自分の母親が理容師であったことから、ハサミには子供の頃から触れてきました。ただ、そのハサミの持ち方に興味を持ち出したのは、カイロプラクティックで臨床を重ね身体の使い方が及ぼす影響について考えだしてからです。ペンの持ち方や箸の使い方に関しては、今までも警鐘を鳴らしてきました。

実は、このペンや箸と同じことがハサミでも起こっているのです。当たり前と言えば当たり前ですね。同じ5本の指で、力を入れて作業をすることには変わりないのですからね。では、どんな持ち方だと障害を起こしやすいかというと以下のような持ち方が指や腕の障害に繋がりやすいのです。

このハサミの持ち方を『根っこ持ち』と呼んでいます。この根っこ持ちで起こる障害が『根っこ持ち障害』です。

根っこ持ち障害の見分け方

①親指が開きにくい

②親指付け根や手首に痛みや違和感がある

③ハサミを持った時に腕や肩に力が入る

④カット時間が長いと、首・腕・肩・背中に痛みや疲労感あり

⑤*フィンケルシュタインテスト陽性

*ファンケルシュタインテスト:親指付け根や手首・腕に腫脹や圧痛があり、母指を他の指で包み込み、そのまま小指側に曲げると痛みが増強することで陽性といたします。(下写真:フィンケルシュタインテスト)

フェンケルシュタインテスト

メカニズム:この根っこ持ち障害は『ドケルバン症候群』と類似した疾患かと思われます。親指の根っこで持つと、短母指屈筋優位で指を使うことによる、手根骨の配列障害を起こし、かつと長母指伸筋に負荷をかけています。結果、先ほどのフェンケルシュタインテストで痛みが再現・増強されることが起きる可能性が高いのです。

*ドケルバン症候群については、以前の記事をご覧ください。

なかなか治らない手首の痛みと その原因と考えられるメカニズムについての考察
ドケルバン病の研究2018

親指が開きにくく、上記のハサミの持ち方をしていて、手指や手首に痛みがあれば、『ハサミ根っこ持ち障害』を生む可能性があると思います。

対処法:

親指の可動域を広げる必要があります。また、同時に手根骨の配列を正す施術が必要になります。

そして、ハサミの持ち方を変えることが一番重要です。

以下の画像が今回来院された美容師さんの新しいハサミの持ち方です。美容師さんが長年使ってきた、ハサミの使い方を変えるのは勇気のいることだと思います。

 このベテラン美容師さんのその後は、手や腕の痛みが改善し、背中や腰なども力が入らず身体中が楽になったと言われていました。

冒頭に申し上げた通り、母親が理容師だったこともあり、子供の頃から、髪の毛を切るあのサクっという音が好きなのですが、力んだ使い方ですと、あの音も柔らかい音ではなくなります。指先を軽く使ったハサミの使い方ひとつで体調が変わることを多くの美容師・理容師さんに知ってもらいたいです。

文責:木津直昭 

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